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GOB備忘録:13

ライブと私の備忘録[3]

前回はレオン・ラッセルの「Song For You」話で終わったが、
次は我がバンドGOBの存在理由であるブルースの話でもしようかな。
私がブルースと初めて出会ったのはNHKのテレビでやっていた音楽番組が最初だ。
番組のタイトルは確か「スーパーセッション」というもので、その頃には珍しく
特別番組仕立てで2夜連続(当然白黒テレビ)、夜の10時ぐらいからやっていたかな。
内容はテレビ局のスタジオにジャズ・ブルース・ロック界からソウソウたるメンバーを集めて
ライブをやらせ、それをオンエアーした単純なもの。ソウソウたるメンバーといっても
その頃の私が知っていたのはロックのレッド・チェッペリンとクリームの
エリック・クラプトンぐらいのもの。あとは殆ど知らない人ばかりだった。

それにセッションといっても殆どが自分達のメンバーだけ(レッド・ツェッペリンに誰か入れて
ライブしようといっても無理なんだけどね)で淡々とライブをこなしていた。
あとはジャズのプレーヤー達がセッションみたいな感じでやっていたぐらいのもの
(考えてみればジャズは初めからセッションだった)。そんな中で唯一セッションポカッタのが
クラプトンが出た時のライブ。ロックミュージシャンらしくラフなイデタチで
自信に満ちたクラプトン、それに引き換え名前も知らない黒人の方は玉虫色の
細身のスーツ(これは私の想像)に細いネクタイを締めて何か場慣れしてない感じ、
そのアンバランスさが面白かった。でもライブ(確かドラムはバディー・マイルス)の方は凄かった。

私から見ると、どう考えてもクラプトンの方が立場は上。
なんせ天下のクリームのリードギタリストだったんだからそう思うのも無理はない。
しかしテレビに写った彼等はどう見ても師匠と弟子という感じ。
師匠が黒人の方で弟子がクラプトン、誰からも一目瞭然だった。
クラプトンは師匠である黒人の一挙手一投足をも見逃さないという感じで直立不動。
黒人の方はライブが始まるとリラックスした感じでブルースを歌ってた。
そして師匠らしくリードのパートになったらクラプトンに譲って彼の弾くギターを
目を細めて聞いていた。しかし最後は自分でリードを弾き出して「ブルースギターは
こう弾くんだよ」と自信ありげに締めくくった。私は一目見て「こういうのがやりたい」と思った。

でもその時はあくまでミテルダケ。あの黒人がBuddy Guyという名前だということを
番組の最後の字幕で見つけたぐらいで、彼等のやってた音楽がブルースだということも知らず、
ただ「何か知らんけどこういうのがいいな」と思っていただけ。いや、そんなことはない。
私は一生懸命レコード屋を探し歩いたんだけど結局バディー・ガイという人のレコードは
見つからなかった。唯一らしいといえばブルースのオムニバス盤の中に
彼の名前を見つけて勇んで買ったのはいいが、今から思うとその内容は教科書的な内容で
ブルースを民族音楽的な過去の音楽として捉えていたようだった。
そのレコードとテレビで見た音楽とは余りにも大きなギャップがあった。

その後、私は東京から故郷の名古屋に戻って一応社会人となった。
しかし昔からの夢だった音楽を続けていくという夢を終わらすなんてことは
全然考えていなかった。しばらくして今のGOBのメンバーである雄サンや研ちゃんと知り合って
私の進む道も何となく決まってきた。その頃の雄サンは英国から帰国したばかりで、
安城から週に何度か今池の「ユッカ」に出てきて弾き語りをしてた
(内容的には歌1・インスト5・誰かのバック4だったはず)。
そんな雄サンのギターから私は久しぶりにあのテレビで見たブルースの音色を聞いた。
目の前で弾く雄サンのブルースはカッコよくてキラ星のごとく輝いていた。そう、
雄サンは既に英国のバート・ヤンシュなどの白人ブルースをマスターしていた。

雄サンと夜な夜なセッションをする内に私はだんだんブルースというものを理解していった。
ブルースのブルースたる決まりごとが歴然とあること。
例えばギターのコード進行的な決まりごとも徐々に判ってきた。
しかし、歌となると全然だった。雄サンの歌うブルースは言うなれば白人的というか
英国の土着的なフォークソングも混じっている感じで純粋のブルースとは違うなと感じていた。
だからといって当時日本に入ってきていたアメリカの黒人達のブルースといったら
カントリーブルースとかデルタブルースといったギター1本でやる
弾き語り的なものが殆どで酔った黒人ジジイのタワゴトみたいな
情けないブルースばかりだった。

しばらくして試行錯誤の上、とうとう自分で何とか歌えるブルースを見つけてきた。
それは黒人の、いやいやまだ早い。レオン・ラッセルがマーク・ベノとの共作アルバムとして出した
「Asylum Choir II(71)」に入っていたBallad for a Soldierという曲がそれ。
今から聞くとお世辞にもブルースらしいとはいえないがその頃は歌い廻し的な感じが
ブルースポくて何度も何度も練習したのを思い出す。結局、この歌は練習だけで
終わったみたいで人前で歌ったという記憶はない。それからどれくらい経ったのか
憶えてはいないが、私が初めて黒人の歌ったブルースをライブで歌った記念すべきその曲は
エルモア・ジェームスのDust My Broomだった。
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写真1:ライブ風景。
by TOMHANA193 | 2010-03-02 13:08


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