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リハビリ日記:65

装具の話

ここ1週間の陽気をみていると、私のいる名古屋でもだいぶ暖ったかくなったようで
本格的な春も間近という感じだ。散歩することが業務命令の私(幸いにもまだ花粉症ではない)に
とっては待ちに待った季節の到来という訳だ。それでも今年の冬は暖冬(別段実感はないが、
今年は冬につきもののホカロンのお世話にならなかったし、腹巻きやハイソックスなどの
厚着からも解放されていた)だったのか今年に入ってからでも2〜3回本格的な散歩に出かけた。
散歩と言えば朝一番に人気のない神社仏閣を巡礼するのも何だか身が引き締まった感じがして
いいんだが、やっぱりこの季節、昼飯を喰った後にポカポカ陽気の街をウロツクのが一番楽しい。
季節の変わり目がすぐ商品に表れる八百屋とか魚屋なんかを用もないのに覗いては
「ははん、コレもう出ているのか」と自分1人で妙に納得している。

今年は「花見の季節には桜の綺麗なあそこの神社へぜひ行ってみたい」という私なりの
目標みたいなものもあるにはあるが、今年の散歩には隠れた目標もある。
それは「今年こそ装具を付けずに散歩に出てみたい」ということだ。装具と言っても
ピンとくる人はあんまりいないと思う。私の場合、脳硬塞に倒れてから2つ目に入院した病院で
はじめて本格的なリハビリ(最初の病院では何をするにも車椅子だけで移動していた)が始まった。
そこでの歩行訓練担当である松本先生に「そろそろコレ付けて歩行訓練してみようか」と
言って出されたのが足首に巻くゴム製の簡易装具だった。
しかしこの装具、脳硬塞になった人が誰でも付けるものではないようで、
私が入院していた病室でも6人中2人しか付けていなかった。

私の場合、意識が戻った時から麻痺が起きた左足の指先には全然力が入らない
(簡単に言うと指先まで神経が廻っていないのでウンともスンともナントモならない)状態なのだ。
だから、本人はちゃんと歩いているつもりでも、何かの拍子に足先が下がってしまい
思わぬところで足を引っ掛け転ぶという危険な状態が付きまとっている。
そのため歩く時には足先が絶対に下がらない装具を付けるようにと退院する時、
先生から言われていた。しかし、ココにきて装具のチカラを借りなくても歩ける予感みたいなものが
だんだん芽生えてきたんだな。実際、ずっと前から自宅に帰ると室内では装具を外していたし、
最近では事務所内でも装具を外して普通の運動靴(病気以前からの紐結び運動靴が
1足だけ残っていた)に履き替えて歩行練習を続けている(しかし、近くのうどん屋へ行く時には
自信がないのかやっぱり装具を付けて出かけている)。

装具を履くことはいいことばかりではない。まず装具を付けてリハビリシューズを履くので
付けていない右足と笑えるぐらい全然大きさが違う(1.5〜2cmぐらい)。
私としては装具を付けているミットモナサより左右まるで違う大きさの靴を履いている方が
よっぽどミットモナイと思えてくる。そして、リハビリシューズがこれまた病人が
履く靴ソウロウで「何とかならないの」と怒りすら覚える。しかし自分で言うのも何だが、
脳硬塞という病気は単に脳にある血管が詰まって運動機能に障害を起こすだけの
病気ではないようだ。と言うのはリハビリで顔を合わせていた同じような患者
(元気そうに杖だけで歩いていたし、パッと見私より軽そうな人)が突然車椅子に乗っているのを
見たり、再入院したと聞くと「やっぱり我々は危険な状態や異変を察知して
身を守る能力・機能がだいぶ低下しているんだな」というのが実感。
以前だったら「こんなこと大丈夫」とタカをくくっていたことが全然大丈夫でなくなっている。
コレが現実だと言ってしまえばそれまでなんだが。

まぁ、何はともあれ私にとっての大きな目標に向かって、慎重に、あくまで慎重に、
1歩1歩近づいていこうと思う。時間だけは有り余るほどあるんだから
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情景写真:65
by tomhana193 | 2010-03-04 11:02


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