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リハビリ日記:92

本場「蟹宴会」の話

朝早くから車に乗って観光とはいえ、アチコチ動き回って気が付いたら辺りは真っ暗。
心地いい疲れと共に今夜最大のイベント、旬の蟹の待つ旅館に着いた。
「12帖プラスアルファーか」一応部屋のチェックはしたものの、
そんなことはこの際どっちでもいい。
美味しい蟹をたらふく喰わせてくれたら、そんな細かいことは気にしないのだ。
案内してくれた仲居さんにココロズケを渡しながら、心の中で「いいね」と念を押しているM美。
その仲居さん「ありがとうございました」と言いながら
「お食事は何時からにしますか?」と上目遣いで聞いてきた。

こういう場合、ここで緊急家族会議というか目と目で合図する
いつもの確認作業が行なわれるのが普通なんだけどこの時は
M美がすぐさま「6時半でいいや」と一応家族みんなの代表という顔して答えていた。
するとみんなは一応に、声に出さない感じで肯定とも否定ともつかないリアクション。
「6時半でいいやって、今もう6時だよ。あと30分もないよ」
仲居さんが行ったあと、間髪入れずにT美が心配そうに言ってきた。
M美「何にも早く喰って、それからゆっくり温泉に行けばいいじゃん」と気にする様子もない。

しばらくして、仲居さん達がやってきて準備し始めた。
そう、今夜は部屋で蟹を喰うという趣向。
誰にも見られずに落ち着いて、しかもタラフク蟹が喰えるというナイスな企画。
みんなの期待をしっかりカタチに固めたような「蟹宴会」が
いよいよこの部屋で始まろうとしていた。蟹好きでない私は何とも思わなかったが、
この待たされて胸が締め付けられそうな時、胸がワクワクドキドキ張り裂けそうな時が
ホントの蟹好きにはたまらんのだろうなと思った。

部屋の真ん中に並べられた机に箸とかお手拭きとかが配られようとした時、
さっと今夜の席順が決まった。コッチ側に奥から私、M美、義父の順に並び、
アッチ側にT美と義母が並んだ。これで準備万端、何時でもOK。
私は直接畳に座ると足が痛くなるので、失礼して低いイスに座って座に着いた。
いよいよ待ちに待った今夜のメインイベント「蟹宴会」が静かに始まった。
最初に出てきたのは口取りみたいな意味合いだと思う
メスの蟹「セイコ蟹」ともう一品、陶器に入れた何かが出てきた。
(すいません、仲居さんの「これを少し掛けてね」という言葉は何となく覚えているが、
出てきたものが何だったのかは、恥ずかしながらウワノソラだったので記憶がない)

普通ならこのチャチなセイコ蟹(もちろん子持ち付の松葉蟹)が
メインイベントの座にしっかり納まることになるのだが今日は違う。
「まだまだ序の口、今日はこんなものではないぞ!」というみんなのチカラの入った
カケ声が今にも聞こえてきそう。でも私はどっちでもよかった。
私の場合、ここにいるみんなとは違って、子供の頃から蟹をそこそこ食べると
何か口の中がシビレるようなアクみたいなものを感じて箸が進まなかった。
そんな体質は大人になった今でもあるみたいで、
蟹はそんなに食べたいと思ったことはなかった。

くどいようだが私の場合「蟹なんか食べたいと思ったことはない」というのは
持って生まれた体質であって、目立ちたいがためのへそ曲がりでも
「フン、蟹なんか」と変に大人ぶっているのでも決してないのだ。
そんな微妙な私の気持ちなんか意に返す気なんかコッチは持ち合わせてないぞとばかり、
ものの2〜3分で皿に盛ってあったセイコ蟹は影もカタチもなくなっていた。
当然、私の前に置かれたセイコ蟹はM美の胃袋にキレイに納まったみたい。
チ〜ン、第1ラウンドは期待が大きかった分だけ肩透かしで終わったみたい。
でも、先はまだまだある。

次に出てきたのが何と平皿に並べられた刺身の6種盛り
(さっと湯にくぐらして花が咲いたような生きた蟹アシももちろんあるぞ)、
それと小鉢に入れられた酢醤油仕立てのカワハギの刺身(ついでに肝付き)も出てきた。
それに「チャンとあるから心配するな」と言わんばかりに絶品の蟹の酢の物も
(ダシを葛で固めたものが掛かっていた)控えめながら大きな顔をしていた。

私、何を隠そう刺身が出てきてホッとしてる。
蟹はだめだが、魚(細かくは聞いていない)は大好きだ。
しかも、地の魚の取りたてピチピチが食べれるから文句はない。
ここでM美が珍しく「ここのカワハギ絶品だね、肝も全然臭くなくて旨い!」と御満悦の状態。
ちなみに、蟹の酢の物は皆さんが想像する通りの味そのもの。
義母も「蟹より魚」党の一員だったのでいかにも嬉しそう。
ナンヤカンヤ饒舌になっているのが判る。
残りの3人は蟹の酢の物を食べたら案の定、
あとはどうでもいいとばかり淡々と皿の刺身をかたずけていた。
チ〜ン、第2ラウンドもこうして後ろ髪を引かれる思いで終了していった。

次はいよいよ御本尊である真っ赤な松葉蟹の御登場と相なるはずなのだが、
「どうでもいいけど焼き蟹はまだか」「早く蟹の入った鍋が食べた〜い!」と罵声渦巻く中、
夢と希望を腹一杯乗せた本場「蟹宴会」も後半戦へ突入するのだ。

もったいぶったような旅館の蟹の出方のように、
この続きは次回ということで。
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情景写真:92

by tomhana193 | 2005-12-19 11:55


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