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GOB備忘録:4

名演小劇場でのライブ

2004年11月13日の土曜日、今年3度目のライブを何故か新栄にある
知る人ぞ知る映画館「名演小劇場」でブルースファンを前にして軽くコナシテきた。
なんでそんな場違いのとこでやったかといえば、話が少し長くなるが
以前R&Bに同居していたT藤君が名演小劇場でのライブの話を持ってきた時から始まるんだ。
それは8月の初め。初めてその話を聞いた時、そんなタイソレタ考えもなくいとも簡単に
「ライブ、いいよ」と二つ返事で承諾していた。しかし私達の知らないところでそのライブ、
結構タイソレタことになっていたんだな。

そもそも昨年アメリカで“ブルース生誕100年”を記念して、コンサートやラジオ、CD、書籍、
学習教材などあらゆるメディアを通して展開されたブルースプロジェクトというものがあった。
その大トリを飾ったのがマーティン・スコセッシ製作総指揮による7本の
長編音楽ドキュメンタリー「THE BLUES Movie Project」。
名古屋では名古屋シネマテークをはじめ名古屋市内の3つの映画館を使って
上映されることになった。その1本「ゴッドファーザー&サン」を名演小劇場でやることになり、
先行上映会の記念イベントとして我がGOOD OLD BOYSのライブが
賑やかしの企画として持ち上がってきたという訳。

同様の企画が全国でも展開されていて、大阪では日本ブルース界の大御所にして
週刊モーニング連載の「Hey!ブルースマン」の大好評コラム執筆者兼ブルース博士でもある
永井“ホトケ”隆のライブ。神戸ではあのBEGINに「日本語ブルースの真骨頂!」と言わしめた
関西屈指のブルースマン光玄が登場。その他、各会場でも有名な現役ブルースバンドが
多数出演して盛り上げたという。そんなブルースマンとしてコレ以上もない晴れ姿の話が
どうした訳かオジサンバンドであるGOOD OLD BOYSに降り掛かってきちゃったんだな。

そうとも知らないノー天気の我々はといえば、それを遡ること10月23日
星ヶ丘のライブハウス「SLOW BLUES」において何と7ヵ月ぶりの練習ガテラのライブを
難無くこなしてチャンチャン(それというのも名演小劇場でのライブの話をI君にすると、
その日は保健衛生学会に出席するため新潟に行ってて名古屋にはいないとのこと。
早速、その日のために代わりのハ−ピストを用意しなくちゃならないとばかり、
急遽スローブルースでのライブ兼ハープとの音合わせを企画した訳よ)。
ライブが終わってしばらくしてY君から「今度の名演ライブの曲目は?
ハープにも伝えなかんから」という何時にない積極的な電話があっただけで、
2人のオジサンからはナシのツブテ。ウンともスンとも言ってこなかった。

ホントにいいのかなと思っていると、案の定ライブの2〜3日前に雄サンから
「今週に入って何か熱が出てきたみたいで大変だったんだわ。
昨日なんか39度もあったし、どうしよう?」という泣きの電話が掛かってきた。
どうしようと言われてもどうしようもないじゃん。冷たく「なるようにしかならない」
とも言えないので「当日までにはきっと治るよ、雄サン」と励ますしかなかった。
ヤレヤレと思っているとライブの前日、研チャンが突然事務所にやって来て言うことには
「明日のライブ出なくていいよね」とこの期に及んで他人を装おうとんでもない話を
持ち出すではないか。「研チャン何言っとるの、そんなのダメダメ」とも言えないので
「研チャンが出てくれないと、このライブ中止しなくちゃならない。
そうするとみんなが落胆するんだよね」というヨイショの話をして、
このライブはヒトエに研チャンにかかっているんだよという熱い雰囲気で盛り上げると
最後は「それじゃ、明日ね」と機嫌よく帰っていった。

まだまだ続く、当日は雄サンに4時半までには私を向かえに来てもらう約束をしていた。
それなのに4時過ぎになって「今、研チャンを迎えに行っているから、
そっちへは5時過ぎるよ」とどうした訳かいきなり変更の通知があった。
ダメだとも言えず「何でもいいから、なるべく早く迎えに来てね」と愛想よく言うのがやっと。
4時50分頃、階段の足音で雄サンの来たのが判った。
しかしドアを開けての第一声が「今日は全然腹にチカラが入らんから歌は歌えんな」と
予定をボロクソにする一言を言うじゃない。これには温和な私でもカチンときた。
「何でもいいよ、インストでいいから自分の持ち時間だけはちゃんと消化してね」と
嫌味を言うのが精一杯。その時、私も雄サンも研チャンも年甲斐もなく
心臓が飛び出すように緊張していたのかもしれない。

名演小劇場という劇場は場所だけは以前から知っていたが入るのは今回が初めて。
雄サンの車を降りたらT藤君のところの女の人がワザワザ待っててくれていた。
「誰か来てる?」と聞くと「もう2人来てますよ」と言うではないか。
「律儀者のY君はえらいな」と言いながら階段を上がったところが
映画館のロビーというにしては狭過ぎる何でもないところ。
エレベーターがないことは前から聞いていたが、いざ上がろうと階段を見て
「何だこの階段、片方にしか手摺がないじゃん」とたぶんそんなことだとは思っていたが
いきなり落胆の色を隠すことはできなかった。
「手摺が右側にあるということは、降りて来る時は手摺はなしか」と
将来の苦労を今から心配しているアリサマ。そうは言ってもないものはないんであって、
なるようにしかならない。愚痴ともつかない溜息をつくしかないのだ。
それにバンドの控え室が3階にあるという。ライブをやるのはさらにその上の4階だという。
「これは先が思いやられるな」とイツしか自分だけの世界にどっぷり浸っていた。

長い階段を登って控え室に入ると案の定、Y君とハープのM君が
手持無沙汰でポツンと待っていた。「やぁ!調子はどうかな」と妙に明るく、
しかし私としてはつまらん話しかその時は思いつかなかった。
今日の曲のことで雄サンから新しい提案があったが全て却下。
何故なら今からでは遅過ぎる。曲順は雄サンに決めさせ待つこと20分、
いよいよリハーサルの時間が来た。階段を上がって今夜のライブ会場に入る。
ざっと100席ぐらいだというがそんなに広くは感じない。
すでにステージにはみんなの椅子が置かれて準備万端。
しかしステージに上がろうとして事態の大変さに気がついた。
杖をついてでもステージに私は上がれないではないか。その時は雄サンが
すかさず手を出して引っ張り上げてくれた。T藤君が言うには司会を勤めるZIP-FMの
ナビゲーターの合図でひとりひとりステージに上がるというが、そんなことはできる訳ない。
すると雄サンが「ステージの裏にたしか階段があるんじゃない」と他人の家の構造まで
見透かしたようなことを言うではないか。T藤君もその事に気がついて
「じゃ、そうしようかな」と予定変更に。

そうと決まれば早いことリハを済ましてゆっくりしようと思うのが人情だが、
雄サンの執拗なまでの気真面目さで思いのほか時間が掛かってしまった。
控え室でライブの時間を待つ間、雄サンも研チャンもだんだん落ち着いてきたみたいで、
来る前あんなに騒いでいたのをチャッカリ忘れたのか、タワイモナイ事を言えるように
何かリラックスしている。そろそろお客さんも入って来たみたいで外が何だか騒がしい。
水野さんやガキチャン、知っている人の横顔も何人か見つける事ができた。
そこで事前に貰ったギャラ3万円を仲良く5人で別けると、すかさず雄サンが
「やる前にギャラを貰うなんて、なんか必殺仕置き人みたいだな」と
その場の話題としては場違いな話が出るところがオジサンバンドなんだな。
そうこうする内に高藤君が「そろそろ時間です」と知らせにきた。
お客の上がる階段の反対側の事務所を通って裏にある非常階段を上がるんだが、
案の定こっちも手摺なし。「日本のビルはこういうところがお粗末なんだよね」と
独り言をいいながら一番最後に急な階段を登って行く。

中は真っ暗で何も見えない。雄サンが幕の合間から客席を覗けるところを
見つけたみたいで盛んに何か言っているが誰もそんな話は聞いていない。
しばらくボサッと突っ立っているとナビゲーターの合図が掛かった。
研チャンから順次ステージに入っていく。「なんだこりゃ、めちゃくちゃ明るいな」と
平生を装いながらオジサン達はまた緊張の極致に上り詰めたんだった。
すぐ隣に雄サン、それからY君、一歩下がってM君、一番向こうに研チャン。
一応スタンバイはできた。するといきなり雄サンが1曲目(雄サンの歌)のイントロを
弾き始めたではないか。大丈夫かと顔を見ると案の定、引きつって緊張しているのが
アリアリ。「大丈夫か?」と思いながらも雄サンには「うん、大丈夫」と
にこやかな顔で合図していた。こうでもしなけりゃ増々アガッて心が何処かに行ってしまう。

1曲目が終わる頃には「雄サンのリードはいつもよりはギコチなかったが
まぁ、こんなもんでしょう」と私は既に評論家のように冷たい他人の目で見ている。
2曲目は私の歌、まあまあこんなものだな。3・4曲目は研チャンの歌、年季が入ってさすが
「コノテはやっぱ研チャンだな」と思った。5曲目はまた私の歌、自分で言うのもなんだが
いつもよりは声が出てたようだ。6曲目はY君のオハコ、歌はちょっと線が細かったが
出来はサスガの一言。ライブも終盤に差し掛かってこの夜の華というべき7曲目は
研チャンと私のゴールデン・デュエット曲。しかし終わりに近づいた雄サンの安堵の心に
ポッカリ大きな穴が開いたみたいで、リハの時とは全く違うメチャクチャ遅いリズムで
勝手に始めてしまった。何だコレはと雄サンの顔を見ると
「ワシ知らんもんね」という他人顔をしている。そんなこんなで
音程も取りづらくて結局たいしたことなく慎ましく終わってしまった。

最後にメンバー紹介を兼ねたいつもの定番「Bye Bye Blues」。私の歌で始まり、
雄サンのギター、M君のハープ、Y君のギターとリードを繋いでいって研チャンの歌に。
最後はまた私に戻ってブレイク。しかし最後の最後のココぞという聞かせどころで
私が歌詞を間違えて無惨にもジ・エンド。見ていた客は何のことだかチンプンカンプンだろうが、
私は「あ〜あ、最後にやっちゃったな」と後悔しきり。「まぁ、こんなもんだわな」という
世紀のライブも無事終了。ライブが終わってから研チャンがいつになく直立不動の姿で
今日来たお客様に深々と感謝のお辞儀をしていたのに、あとの者はそんなことを気に掛けず
ソソクサとステージ裏に引き上げてくるアリサマ。そして肝心の映画も見ないで
打ち上げ会場のジャズ喫茶に全員シケ込んだのでした。お疲れさんでチャンチャン♪
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写真1:これがライブ写真なのだ。
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写真2:余裕しゃくしゃくのYMコンビ。
by TOMHANA193 | 2010-03-02 13:24


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