∴名古屋市の都市計画による電車軌道の敷設や第2次世界大戦中の 道路拡張などに協力して、多くの寺院が大須の地を離れていった。 『長松院』もそういう寺のひとつだ。由緒書きによると「記念橋の傍らにある曹洞宗の古刹。 ここには天狗囃子の伝説が残されています。遠くの方からお囃子が聞こえるが、 その音のする方へいくら行っても囃子の音が近くならない。という不思議な伝説です」 とたったこれだけ。これだけでは話にならないので“天狗囃子”から調べることにする。 ∴「そもそも人間がこの世に営みを立てるとき、様々な脅威や摩訶不思議な現象と 対応しなければならない。この摩訶不思議な超自然的な存在が今でいう妖怪である。 それらと交渉するなかで人はそこに神秘性を認め、それは神のなせる業であるように意識し、 妖怪と神を一体化する考えが生まれたのである。したがって、妖怪は一面において 人間を畏怖させるが、また一面において人間に恵みを与えてくれるものであり、 鬼・天狗・河童はそうした妖怪のヒーローである。鬼が人を食う話は古代・中世において 沢山あるが、もっともよく知られる話に“大江山の酒顛童子(しゅてんどうじ)”がある。 ∴ところで、この話をよく吟味してみると酒顛童子は鬼とされているが、 童子といえば童形の稚児で神の化身である。酒顛童子は山の神の化身で、 この山の神というのは山のふもとに住む人の祖霊が山中他界にとどまってなった神である。 この祖霊は恩寵と懲罰の二面性をもつものである。また、鬼は人を食ったり さらったりする恐ろしい妖怪として意識し語り伝えられているが、 昔話の世界になると反対に鬼のほうが傷めつけられたり、また恩恵を与える鬼もある。 “一寸法師”の話などはその代表である。要するに鬼は本質的には祖霊の象徴であり、 悪霊を祓ってくれるものである。 ∴東北地方のナマハゲをはじめ、小正月に鬼や異形者に扮装をして 各戸を訪れるものも祖霊の象徴である。また、九州の国東半島の六郷満山の 寺院をはじめ全国各地の寺院で営まれる修正会・修二会に登場する鬼も悪霊を 祓ってくれる善神である。鬼とならぶ妖怪の横綱が天狗である。山の怪異伝承のなかには 天狗の行状として語られる伝承がきわめて多い。深夜にノコギリやオノで木を伐り倒す音が 聞こえるので翌日そこへ行ってみると木を伐り倒した跡がまったくなかったという “天狗倒し”の話。夜中に山中に入ると、どこからともなく石が飛んでくるという “天狗礫(つぶて)”の話。昼間でも山中で突然大声でゲラゲラ高笑いされる “天狗笑い”の話。山中で突然太鼓の音が聞こえてきたり、囃子が聞こえてくるという “天狗太鼓”“天狗囃子”の話。夜中に明かりをつけたり火の玉を飛ばしたりする “天狗火”の話など数えればきりがない。 ∴もともと天狗は人間界と隔絶した山という異界に棲み、山の支配者として 人間から畏怖される超自然的な存在であった。この天狗がしだいに人間と 交渉を重ねるうちに、住処を里にもつようになり、そこから人間に近づき、 しまいには笑い話に語られるような人間よりも劣った道化的存在となった。 日本国内でも林の中の大木の倒れるような音を“天狗倒し”、祭りのような騒ぎが聞こえる “天狗囃子”また行方不明者の神隠しも天狗の仕業とされているところもあるようだ」 と如何にも長ったらしい説明が続くが、私にはよう意味がわからんときてる。 要は心の平静を保つための山の民の知恵ということでいいでしょうかねM野さん、助けてくれ! ∴あんまり期待しないで現地に行ってみた。するとどうだ、これは意外といけるかも しれないと思えてきた。まず、門が開け放たれていて「誰でもいいから入ってこい」と 言わんばかり、気分がいい。門から立派な拝殿までまっすぐ続く参道が、 これまた気分がいい。そして入ると意外に広い境内に驚く。本堂は境内の一番奥。 移転のお陰で土地も沢山もらったのか、思いの他ゆったりしたレイアウトが 実現したみたいだ。扁額には金の凸文字で「壽量山」と書いてある。 ここにも寺の裕福さが伺いしれる。一番の驚きはココの境内。詰め込めば10台20台と 駐車が可能なぐらい空いているのに1台も貸してない。いい意味で大雑把な住職に 敬意を評したい。また、境内の大木には私設のブランコを取り付ける心優しき住職とみた。 しかし、片隅に置いてあるゴルフ練習のアミだけはいただけない。 即退場としたいところだが、この場はお情けでイエローカードに留めておく。 都会の中にあって、この落ち着きはノーベル賞もんだ。
by tomhana193
| 2005-12-19 14:57
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人生の御負け
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